各社DAWソフトが手を出しやすい価格帯のものから仕事で本格的に使える高性能なものまで幅広くラインナップされたことで、初めてDTMに挑戦する人も、ちょっとソフトを変えてみようかな?と思う人にも迷ってしまう現状。
種類がありすぎて選びづらい、正解がわからない人向けに、DAWメーカー各社のスポンサー、エンドース等のポジショントークなしの、完全な独断で各種DAWソフトを商業プロ作曲家として日々制作をする筆者がレビューします。
- 全てのDAWを深く触ったわけではないので、完全な好み、主観が入りまくっています
- 劇伴オーケストラや器楽曲を作ることが多いですが、ポップス、ロックを作ることもあります
- DAW付属音源はほぼ使用しないので、付属音源の良し悪しはあまり気にしていません
- 譜面制作は譜面制作ソフトで行うため、譜面機能の良し悪しも気にしていません
- Mac, PCは1台でのみ作業をする前提です。レンダリング用のクライアントマシンなどはなしとします
Apple Logic Pro X
Appleが開発するDAWソフトのLogic Pro。Mac付属のGarageBandからLogic Proに乗り換える方もすくなくないのではないでしょうか?
私はLogic Pro 7あたりから使用していました。当時は設定が複雑だったり、微妙に使い勝手が悪かったりと色々と問題はありましたが、現在は割と何でもそつなくこなす優等生なDAWに進化しています。
良いところ
Apple製なのでMacとの相性が抜群。
CPUもメモリも他のDAWに比べて圧倒的に上手に使用でき、マシンをフルパワーで使用できている印象があります。
UIもポップで視認性が良く、MIDI、オーディオ編集どちらもあまりクセのない操作で扱いやすいです。
特にMIDI編集は他のDAWに比べてスッキリとした見た目でスピーディーに作業可能です。
必要な機能を合理的に詰め込んだAppleらしいデザインです。
何よりも、1度買ってしまえばバージョンアップが無料な点はあまりにも大きなメリットです。
他のDAWでは基本的に有料ですからね。
いまいちなところ
Macでしか動かないこと
最大のデメリットはここに尽きます。
メリットの一つでもあるApple製でMac専用設計が裏を返せばデメリットとなります。
そろそろPC買い替えたいな〜スペック今よりも上げたいな〜となっても、必ずAppleの製品サイクルに従ってMacを購入することになるため、時期によっては割高なMac買い替えをすることになります。
加えて、CPUとメモリは必要だけどGPUは現状、3Dモデリングをするわけでなければそこまで必要とならないDTMにとっては比較的割高なMacを購入することになります。
Logicがおすすめな人
GarageBandからステップアップしたい人
普段からMacを使用していてDTMもMacで行いたい人
PCには比較的お金をかけることができ、Appleの新製品発売タイミングでPCを買い替えても苦にならない人
細かな設定なしでテンポよくサクサクと快適に作業をしたい人
Avid ProTools
スタジオに必ずと言って良いほど導入されているのがPro Tools。
スタジオとデータやり取りをする際にはPro Toolsファイルで行われることが多く、ある程度触れるとやりとりがしやすいです。
逆に言えば、スタジオとのやり取りがあまりない、ミックスはスタジオにお任せのスタイルであればPro Toolsを触れる必要はそこまでないです。
良いところ
圧倒的なオーディオ編集のしやすさ。
テイク管理、コンピング(テイクの繋ぎ合わせ)、ルーティングの柔軟性、安定性、全てにおいて録音と編集を安全にスピーディーにこなすことを前提にしたような設計です。
ProToolsでオーディオ編集がうまくできなかったら、自分の編集スキルを疑った方が良いと言うほど高精度な編集が可能です。なによりも波形表示が他DAWに比べ非常に早く、Sample単位で表示した場合の視認性の高さもピカイチです。軽視されがちですが、フェードイン、アウト、クロスフェードもかなり細かく設定でき、デフォルト設定もできるため、テイクを繋いで完璧なトラックを作り上げることも素早く行えます。
最近ではキーボードショートカットがユーザー自身でカスタマイズできるようになっていたり、MIDIまわりが少し高機能になったりと、個人ユースでも導入しやすくなっています。
画面構成も基本的には編集、ミックス、(とキーエディタなど)と比較的シンプルで、必要な機能に素早くアクセスしやすかったりと、入門はしやすいのも特徴です。
ただし、本当に使いこなそうとすると、独特なショートカット配置を覚えることが必須に。。。
いまいちなところ
高機能になったとは言えMIDI機能はLogicやCubaseなどに比べるとやはり見劣りします。
そのため、録音がメインではない方、スタジオとのやりとりがなく、個人で制作が完結する方にはややおすすめしづらいです。
あと、料金体系が買い切りだったり、サブスクだったりと分かりづらい点もややマイナスです。
必要なときだけサブスク契約をするスタイルが一番お得でおすすめです。
Pro Toolsがおすすめな人
プロとして活動していて、かつ外部スタジオでレコーディングやミックスを行う(行ってもらう)人
プロとしての活動の準備をしたい人
作曲ではなく、ミックスエンジニアとして活動を本格化させたい人
スタジオ勤務の方は言うまでもなくPro Toolsを使用していると思うので割愛します
Steinberg Cubase
日本で圧倒的なシェアを誇るCubase。私のメインDAWもCubaseです。
ほぼ毎年バージョンアップが行われ、『そうそう、こういうのが欲しかったんだよ』と思いもよらなかったけど確かに便利で使いやすい機能がどんどん追加されていっています。
そのおかげで超多機能なDAWとなり、できないことは多分ないというほどの巨大DAWとなりました。
NuendoはMA向けの機能を追加したCubaseの機能向上版と認識して問題ないためここでは紹介しません。
良いところ
とにかく多機能で、同じことをするにもキーエディタ、ドラムエディタ、スコアエディタ、リストエディタ、など様々なアプローチがとれたり、個別ウィンドウで開くのか、編集ウィンドウ内で直接触るのかなど、自分好みにワークフローを構築できるのがCubaseの最大の特徴です。
MIDI編集は他のDAWの追従を許さないほどとにかく多機能で、多数のトラックを扱うことが多い人ほどその恩恵を受けやすいです。
トラックが多くなったとしても表示の仕方や整理がしやすいため、混沌としたプロジェクトファイルにならずにすみやすいです。Cubaseユーザーの一人でもあるMADMAXの作曲家であるJunkie XL氏のCubaseは1000以上のトラックナンバーが動画内で映ったこともあるほど。
基本的にどのDAWを選んでも制作できない音楽ジャンルはないと考えていますが、多機能が故に、やはり劇伴などのトラック数が多くなるスタイルには持ってこないなDAWです。
いまいちなところ
多機能が故にメニューや設定が多すぎること。
途中から参入したユーザーは4桁ページあるマニュアルを見て、そっと閉じるでしょう。
バージョンアップ直後は割と致命的な不具合などがある場合があるため、仕事で使う場合は大体数ヶ月待ってから移行するのが定石です。とはいっても、旧バージョンも同じPC内に保持しておけるため、新しいバージョンをインストールすること自体は問題ないです。
オーディオ編集はPro Toolsほど使いやすくはないこと。
とはいえ、大規模な収録でなければアコースティックギターを収録したり、ヴォーカルを収録したり、何も問題なく快適に操作できます。
Cubaseがおすすめな人
多機能こそ正義!自分の道具は自分でカスタマイズして使う!な人
頻繁なバージョンアップにワクワクする人
周りでDTMをやっている知り合いがCubaseな人
100トラックを超えるような大規模プロジェクトを扱う人
Ableton Live
日本で使用している人は以前よりは多くなったものの、他DAWと比べると以前として少ない印象のAbleton Live。
とはいっても海外ではかなり人気のあるDAWのひとつです。
名前にLiveと付いていますが、ライブ専用といったわけでもなく、じっくりと作り込みもできます。
良いところ
DAW全体がシンプルなグラフィックで構成されているため、画面がごちゃごちゃせず、制作に集中することができます。あまり重要でないことのように思えますが、見た目がスッキリしているだけでもモチベーションはかなり変わるため結構重要です。
付属プラグインの使い勝手もシンプルながら使いやすく、EDM系アーティストが使用していることが多いため、そのジャンル向きと思われがちですが、意外とオールマイティに使いやすいプラグインが揃っています。(とはいえ、EDM系で使いやすいプラグインが多いのも事実です。)
深いメニューまで潜ることなく、オーディオ素材にピッチをなだらかに変化させたり、逆再生させたりと簡単にエディットできることも大きな特徴です。
Max for Liveという機能を使えばオリジナルのシンセやプラグインを作ることもできます。
そういった意味では実験的な音楽を作るアーティスト(インスタレーション作品など)にも人気な理由も頷けます。
あと、基本的にはワンウィンドウでどうにでもできる設計のためノートPCでの作業が非常にしやすいです。
いまいちなところ
あまりにも他DAWとインターフェース構成が違うため、乗り換えようとすると最初はすごく苦労します。
私はトラックリストが右側にあることがどうしても慣れることができませんでした。
MIDIの細かなエディットはどうしても他DAWよりも一手間かかる印象です。
緻密でシステマチックなプロジェクト構成をすることも、やや苦手なため、大規模な劇伴や外部スタジオとの連携があるステムファイル、パラデータの提出が必要なオーケストラ系の制作には少しだけ使い方に工夫が必要です。(もちろん劇伴でLiveを使っている人もいます。)
Liveがおすすめ人
オーディオ素材をたくさん使って曲を作るスタイルの人
細かな調整よりも、どんどん打ち込みをしていきたい人
ノートPCでどこでも制作をしたい人
Max for Liveを使ってみたい人